「ありの行列」の授業[1]構造よみ-文章の構造をとらえる[板書案]

「ありの行列」の授業[1]構造よみ-文章の構造をとらえる[板書案]
今回の教材:「ありの行列」筆者:大滝哲也
【国語小3教科書掲載(光村図書出版)】
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「ありの行列」(大滝哲也)は、小学校3年生の光村図書出版の国語教科書教材です。
これから三回にわたって「ありの行列」の授業で役立つ教材研究や発問例を提案していきます。
第一回目では、「ありの行列」の文章の構造をとらえていきます。

今回は「構造よみ」段階にあたります。未読の方は、先に「説明的文章の新三読法について」と「説明的文章の構造よみ」をご覧ください。

「ありの行列」(大滝哲也)とは?

 「ありの行列」は、大滝哲也の説明的文章です。1980(昭和55)年から光村図書出版の小3国語教科書教材として用いられています。
 ありは、ものがよく見えないのになぜ行列を作ることができるのかを、実験・研究・考察によって解明していった文章です。実験・研究をもとに推理をしていく楽しさが味わえます。その推理の過程を読み深めていくことで、説明的文章を読む力が身につきます。

授業ポイント

 授業のポイントは次の通りです。

「ありの行列」授業ポイント

  1. 筆者の考え(仮説)を証拠を示しつつ書いた「論説文」であることを知る
    光村図書出版の国語教科書を用いる小3の子どもたちにとって「論説文」は初めて出会う文種。これまでの「説明文」との違いを確認することが重要です。(文種の違いについて詳しくはこちら)
  2. はじめ・なか・おわり、それぞれの役割をつかむ。
  3. なかの論証部分の構造上の特徴をつかむ。
    特に「なか」の部分で、①二つの実験→②それに基づく考察→③考察に基づく研究→④再度の考察-という構造になっていることを確認します。

文種は「論説文」

 「ありの行列」の文種は、論説文(persuasive型)です(文種について詳しくはこちら)。
 第9段落「においをたどって、えさの所へ行ったり、巣に帰ったりするので、ありの行列ができる」が仮説(主張)です。(ただし、筆者の仮説ではなく、ウイルソンの仮説です)

発問例

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「ありの行列」は、これまでと文章の種類が少し違います。「こまを楽しむ」や「すがたをかえる大豆」などと何が違うだろう?
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「こまを楽しむ」や「すがたをかえる大豆」には、筆者の意見や考えが特に書かれていなかったね。
でも、「ありの行列」は、はっきりと筆者の意見・考えが書かれています。こういう文章を「論説文」と言います。「こまを楽しむ」や「すがたをかえる大豆」などを「説明文」と言います。
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では、「ありの行列」で筆者の意見・考えがまとめて書かれているのは、どこだろう?

「ありの行列」の構造よみ

 文章の構造を読んでいきます。「ありの行列」は、説明的文章の典型的な形である「はじめ・なか・おわり」の三部構造です。

1.「はじめ・なか・おわり」に分ける

 まず「ありの行列」の文章を「はじめ・なか・おわり」に分けていきます。(それぞれの見分け方の指標はこちらをご覧ください。)
 構造よみでは、まず「はじめ」はどの段落かを考え、次に「はじめ」に対応する「おわり」はどの段落かを考えます。そうすることで自ずと「なか」の段落が浮かび上がってきます。

はじめ1段落(問題提示)

 第1段落には、「なぜ、ありの行列ができるのでしょうか。」と、文章全体を貫く問題提示あります。

 夏になると、庭や公園のすみなどで、ありの行列を見かけることがあります。その行列は、ありの巣から、えさのある所まで、ずっとつづいています。ありは、ものがよく見えません。それなのに、なぜ、ありの行列ができるのでしょうか。(第1段落)

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Point
2段落「アメリカに、ウイルソンという学者が〜ありの行列をかんさつしました。」をはじめに含めたらいいのではないかという意見が授業で出ることがあります。
しかし、第2段落②文に「この人は、次のような実験をして、ありの様子をかんさつしました。」とあります。「次のような実験」は、第3段落~第4段落を指し示しています。
また、第9段落(おわり)の「このように、においをたどって、〜ありの行列ができるというわけです。」との対応を考えても、第1段落のみをはじめとするのが自然です。
なか28段落(詳細な説明、具体的な事実提示)

 なかでは、問題提示を受けてありの行列ができる理由を解明するための、「実験その1」「実験その2」「それに基づく考察」があります。また、なか後半ではその考察を確かめる「研究」と「それに基づくさらなる考察」があります。

おわり9段落(問題提示に対する結論)

 9段落では、この文章の結論が示されています。また、これは「はじめ」(第1段落)の問題提示に対応した結論(答え)になっています。

 このように、においをたどって、えさの所へ行ったり、巣に帰ったりするので、ありの行列ができるというわけです。(第9段落)

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Point
79段落が「おわり」ではないかという意見が授業で出ることがあります
しかし、第7段落には「この研究から」とあり、ここは第6段落での研究の延長線上の説明です。そして、第8段落もその記述を受けての考察です。
それに対して第9段落は「このように」という言い方をした上で、まとめ的に結論を述べていると読めます。「はじめ」である第1段落との対応という点でも第9段落を「おわり」とするのが自然です。

発問例

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❶説明的文章の典型構造は何部だったかな?
❷三部構造にそれぞれ名前があったよね。
❸では「はじめ」「なか」「おわり」はそれぞれどの段落かな?
❹そうすると「はじめ」の役割は?(指標を元に考えさせます。)
❺では、「おわり」の役割は?(同上)

 「はじめ・なか・おわり」に分ける学習は、個人で考え→その後グループ→全体で話し合っていく探究型授業で進めていくとよいと思います。(探究型授業について詳しくはこちら)

2.「なか」をいくつかのまとまりに分ける

 次に、「なか」を内容ごとにいくつかのまとまりに分けていきます。「ありの行列」では、なかを二つに分けることができます。

なか125段落

 前半のなか1(第25段落)には、二つの連続した実験とそれに基づく考察があります。これらは、ひとまとまりの実験・考察と捉えられます。

 アメリカに、ウイルソンという学者がいます。この人は、次のような実験をして、ありの様子を観察しました。(第2段落)

 はじめに、ありの巣から少しはなれたところに、ひとつまみのさとうをおきました。(第3段落・①文)

 次に、この道すじに大きな石をおいて、ありの行く手をさえぎってみました。(第4段落・①文)

 これらのかんさつから、ウイルソンは、はたらきありが、地面に何か道しるべになるものをつけておいたのではないか、と考えました。(第5段落)

なか268段落

 なか1での二つの連続した実験とそれに基づく考察を受けて、なか2(第68段落)では、実際にありの体の仕組みを研究・それに基づくさらなる考察をしています。

 そこで、ウイルソンは、はらたきありの体の仕組みを、細かに研究してみました。(第6段落・①文)

 この研究からウイルソンは、ありの行列のできるわけを知ることができました。(第7段落)

 はたらきありは、えさを見つけると、道しるべとして、地面にこのえきをつけながら帰るのです。(第8段落)

発問例

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❶「なか」はいくつに分かれるだろう?
❷その理由は?
❸本文から証拠を見つけ出そう。

3.「なか」相互の関係を確認

 次に「なか1」と「なか2」の相互の関係「並列型」か「展開型」かを見分けていきます(「なか」相互の関係について詳しくはこちら)。

 「ありの行列」では、「なか1」(実験1→実験2→それに基づく考察)、「なか2」(なか1の考察に基づく実験→さらなる考察)となっているため、なかの順序を入れ替えることはできません。並列型でなく展開型の関係であることがわかります。

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Point
なか相互の関係の学習が、子どもたちにとってハードルが高いと判断した場合は、4年・下の「ウナギのなぞを追って」(光村図書出版)などで指導したらよいと思います。「ウナギのなぞを追って」は、時間の順序であると同時に、調査結果にもとづいて次の調査を進めているという点で「展開型」になっています。

「ありの行列」の構造よみの板書案

 「ありの行列」の構造をよむ授業を板書に落とし込むと次のようになります。

 拙著『文章吟味力を鍛える—教科書・メディア・総合の吟味』では、評価する力と批判する力の双方を含む「吟味力」の理論や実践例を解説しています。

次回は、論理よみに入っていきます。

📕注:本文は、小学校国語教科書『国語三・下』(光村図書出版,2020年)による。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して行った授業の助言・指導、講演は1000回を超える。