「ありの行列」の授業[2]論理よみ-柱に着目し論理をつかむ[板書案]

「ありの行列」の授業[2]論理よみ-柱に着目し論理をつかむ[板書案]
今回の教材:「ありの行列」筆者:大滝哲也
【国語小3教科書掲載(光村図書出版)】
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前回は「ありの行列」(大滝哲也)の文章の構造をとらえました。
今回は、柱の段落・柱の文に着目しながら、段落相互・文相互の論理関係を読みとっていきます

▶︎「ありの行列」の授業 全三回 [1]  [2]  [3]

今回は「論理よみ」段階にあたります。未読の方は、先に「説明的文章の新三読法について」と「説明的文章の論理よみ」をご覧ください。

「ありの行列」の論理よみ

 論理よみでは、柱の段落・柱の文に着目しながら、筆者が構築した論理の流れをとらえていきます

 授業では、はじめ・なか1・なか2・おわりについてそれぞれ柱の段落・柱の文を見つけ出し、論理関係を確認していきます。

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Point
光村図書出版の国語教科書を使用している小学4年生にとって、「ありの行列」で初めて柱の段落と柱以外の段落が登場します。これまで授業で取り上げてきた「こまを楽しむ」などの説明的文章は、すべての段落がそれぞれ「柱の段落」でした。

そのため「ありの行列」では、柱の段落とそれ以外との相互関係に着目する指導が必要になります。特になか1・なか2の柱の段落・柱の文に丁寧に着目し、その論理関係を説明していきます。

1.はじめ(序論)—柱の段落・柱の文

はじめ—柱の段落 1段落

 はじめは第1段落のみですから、1段落がそのまま柱の段落となります。

1①夏になると、庭や公園のすみなどで、ありの行列を見かけることがあります。②その行列は、ありの巣から、えさのある所まで、ずっとつづいています。ありは、ものがよく見えません。それなのに、なぜ、ありの行列ができるのでしょうか。

はじめ—柱の文 ③文・④文

 1段落の主要な役割は、問題提示です。④文「それなのに、なぜ、ありの行列ができるのでしょうか。」で問題提示をしているため、④文が柱の文といえます。
 その上で「それ」の指し示す「ありは、ものがよく見えません。」に着目します。③文と④文がセットで問題提示を形成しているとも読めますので、③文「ありは、ものがよく見えません。」も併せて柱として選んでよいと思います。

 はじめの要約は、次のようになります。

ありはものがよく見えないのに、なぜありの行列ができるのか。

発問例

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❶はじめ(第1段落)の柱の文はどれかな?
❷「ありの行列」のはじめ(第1段落)の役割はなんだった?
❸そうだよね。「問題提示」の役割だね。とすると、柱の文はどれだろう?
❹④文が柱だとして、その中の「それなのに」の「それ」って何を指し示している?
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Point
柱に着目する場合は、構造よみでとらえた構造上の役割(はじめ—問題提示、など)を再確認することも大切です。

また、「ありの行列」では、柱の文を見つけだすだけで、 柱の文とそれ以外の関係については、先生が軽く説明する程度でいいと思います。

なか1(本論1)—柱の段落・柱の文

 なか1は、第2段落~第5段落です。なか1には、二つの連続した実験とそれに基づく考察があります。

なか1—柱の段落 5段落

 なか1の柱の段落は、第5段落です。

5これらのかんさつから、ウイルソンは、はたらきありが、地面に何か道しるべになるものをつけておいたのではないか、と考えました。

 なか1では、第3段落で一つ目の実験、第4段落で二つ目の実験をします。それらを受けて第5段落で考察を導き出します。第2段落は、第3段落・第4段落の実験の予告をしています。

 次のように表すことができます。

なか1—柱の文 ①文

 第5段落は一文だけなので、第5段落①文がそのまま柱の文です。

 なか1の要約は、次のようになります。

ウイルソンは、はらたきありが、地面に道しるべになるものをつけたおいたと考えた。

発問例

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❶「なか1」の柱の段落はどれかな?
❷問題提示「なぜありの行列ができるのでしょうか。」の答えにつながっていくのはどの段落?
❸第5段落が柱である理由は?
❹「これらのかんさつから」という言葉以外に、第5段落が柱である理由はない?
❺第3段落と第4段落の関係はどうなっている?

なか2(本論2)—柱の段落・柱の文

 なか2は、第6段落~第8段落です。なか2では、なか1の考察を受けて、実際にありの体の仕組みを研究・それに基づくさらなる考察をしています。

なか2—柱の段落 第8段落

 なか2の柱の段落は、第8段落です。

8はたらきありは、えさを見つけると、道しるべとして、地面にこのえきをつけながら帰るのです。他のはたらきありたちは、そのにおいをかいで、においにそって歩いていきます。③そして、そのはたらきありたちも、えさを持って帰るときに、同じように、えきを地面につけながら歩くのです。④そのため、えさが多いほど、においが強くなります。

 第6段落で、はたらきありの体の仕組みを研究し、「とくべつのえきを出す」ことをつきとめます。それを受けて第8段落で「えさを見つけると、道しるべとして、地面にこのえきをつけながら帰る」という仮説を導き出します。第7段落は、第6段落から第8段落をつなぐ段落です。

  次のように表すことができます。

なか2—柱の文 ①文②文

 柱の文は、 ①文と②文です。
 なか2の考察の中心は、「道しるべとして、地面にこのえきをつけながら帰る」こと、「他のはたらきありたちは、そのにおいをかいで、においにそって歩いてい」くという推理です。③文「同じように、えきを地面につけながら歩く」も大切ではありますが、 ①文・②文の付け足し的な位置づけです。④文「えさが多いほど、においが強くな」るも同様です。

 要約は次のようになります。

はたらきありは、えさを見つけると、道しるべとして、地面にこのえきをつけながら帰り、他のはたらきありたちは、そのにおいをかいで、においにそって歩いていく。

発問例

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❶「なか2」の柱の段落はどれかな?
❷ここでも問題提示「なぜありの行列ができるのでしょうか。」の答えにつながっていくのはどの段落か、考えてみよう。
❸柱の段落(第8段落)の柱の文はどれかな?
❹候補が2つ出てきたね。柱の文は1文?それとも2文がいいかな?
❺「柱」は「それがないと文章全体の意味がわからなくなる骨格」だよ。

おわり(結び)—柱の段落・柱の文

おわり—柱の段落 9段落

 おわりは第9段落だけですから、そのまま柱の段落です。はじめの問題提示「なぜ、ありの行列ができるのでしょうか。」に対する結論を示しています。

9このように、においをたどって、えさの所へ行ったり、巣に帰ったりするので、ありの行列ができるというわけです。

おわり—柱の文 ①文

 一文しかありませんので①文が柱の文です。
 要約は、ほぼこのままですが、あえてまとめると次のようになります。

においをたどって、えさの所へ行ったり、巣に帰ったりするので、ありの行列ができる。

発問例

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構造よみのときに確認したけど、おわり(第9段落)の役割は何だっけ?
❷これははじめ(第1段落)の問題提示に対応しているかな? 確かめてみよう。

「ありの行列」の論理よみの板書案

 「ありの行列」のなか1の柱の段落をとらえ、論理のながれよむ授業を板書に落とし込むと次のようになります。

次回は、吟味よみに入っていきます。

 拙著『文章吟味力を鍛える—教科書・メディア・総合の吟味』では、評価する力と批判する力の双方を含む「吟味力」の理論や実践例を解説しています。

📕注:本文は、小学校国語教科書『国語三・下』(光村図書出版,2020年)による。段落番号、文番号、下線は本サイトによる。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して授業の助言・指導や講演を行なっている。