高い学力を生む!秋田県のアクティブ・ラーニング「探究型授業」の創り方

高い学力を生む!秋田県のアクティブ・ラーニング「探究型授業」の創り方
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秋田県では、子ども同士の話し合いを大事にする「探究型授業」が多く行われています。
私は秋田大学で二十数年、探究型授業について研究してきました。探究型授業は、秋田県が全国学力・学習状況調査で毎年好結果を残している理由の一つです。
今回は「探究型授業」の特長・構築の仕方などについてご紹介します

この記事はこんな方におすすめです

  • 思考力や判断力を育てるには、どういう授業をしたらいいのか
  • 「対話的な学び」が大切と言われているが、どう授業を進めたらいいのか。
  • 秋田の「探究型授業」とはどういうものか知りたい。

秋田県の「探究型授業」とは?

 探究型授業は、秋田県で行われている子ども同士の話し合いや討論を大事にした教育方法です。「対話型授業」「アクティブ・ラーニング」の中でも最も典型的なものといえます。秋田県では20年以上前から行われ、現在では全国的な注目を集めています。

 探究型授業には、次の三つの要素があります。

探究型授業の三つの要素

  1. 子どもと先生で学習課題を設定する。
  2. 子ども相互の対話(話し合い・討論)を生かしながら課題を解決していく。
  3. まとめと振り返りを行う。

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「探究」とは、対象の本質を探り、見極めることです。
「探究型授業」という名称は、秋田県検証改善委員会委員長をつとめているときに阿部が提案しました。

探究型授業ではどんな力がつくのか

 自分たちで仮説を立て、検討し、試行錯誤し、解決方法を見つけていく中で、子どもたちに考える力、判断する力、あたらしい見方を生み出す力がついていきます。
 それは言い換えると、今求められている「見方・考え方」であり、「思考力・判断力・表現力」です。

探究型授業の基本モデル

 探究型授業は、課題を設定する、一人で考える→グループで検討する→学級全体で検討する、最後にまとめと振り返りを行うという過程で進めていきます。

探究型授業の実践方法

1.導入

学習課題の設定

 学習課題は、はじめは先生が提示します。だんだんと子どもと先生が話し合って決めていくようにします。

 たとえば、国語であれば「『ごんぎつね』のクライマックスを、作品本文を根拠に見つけだそう。」「語り手の見方に納得できるかできないか、本文を根拠に自分の考えをもとう。」などが考えられます。
 算数・数学であれば、「分数同士の掛け算は、なぜ分母と分母・分子と分子をかけると答えがでるのか説明できるようにしよう。」などがあります。


ポイント
 学習課題は、①子どもが解決しようと思えるようなものであること ②少し高めのハードルであること ③何を解明すればいいのかがわかりやすいものであることなどが大切です。

2.展開

自力思考

 必ず子ども一人一人が課題解決についての自分なりの仮説をもてるようにするために「自力思考」の時間を設定します。

 これがないと、そのあとのグループの学び合いでその教科が得意な子どもだけが発言し、不得意な子どもは黙ったままということになってしまいます。


ポイント
 先生は、個人思考の時間にうまく仮説をもてないでいる子どもを丁寧に援助します。

グループの学び合い

 次は、グループによる学び合いです。3〜4人程度のグループが効果的です。

 一人一人課題についての自分の意見(仮説)を発言していきます。そして、一致する点、相違する点について話し合います
 話し合っているうちに意見が一致することもありますが、無理にグループで意見を一つにさせてはいけません。「違いがあることはよいことだ」と評価しつつそれぞれの意見の根拠を深めていけばいいのです。


ポイント
 グループの学び合いでは、司会(学習リーダー)が大切です。 初めは先生が司会を指名します。そして司会の方法を少しずつ指導していきます。具体的な司会の方法を教えるとともに、褒めて励ますことが大切です。

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グループの人数ですが、小2~小3くらいだと3人程度の方が話し合いがしやすいようです。
小4〜小6・中学生・高校生は4人の方がより豊かな話し合いができるようです。
5人以上もありますが、発言時間や論議の絡み方を考えると難しい場合もあります。

学級全体の学び合い

 次は、学級全体の学び合いです。
 各グループの代表が自分たちの学び合いの結果を全体に報告します。それを先生は整理し、論点を絞っていきます
 論点整理の後、学級全体で話し合いを始める場合もありますし、再度グループの学び合いに入ってから学級全体で話し合うこともあります。

 ここで明らかになってきた課題の解決は、板書で整理します。もちろん「解決」は一つとは限りません。


ポイント
 先生のコーディネート力が重要な位置を占めます
 授業の前に、子どもたちから出されるであろう意見(仮説・見方)を多様に予想しておき、どのように話し合い・討論をリードしていくかを計画しておきます。

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板書の仕方については「構造的板書の基本と実践」をご覧ください。

3.終末

まとめ・振り返り

 授業の終わりには、「学習課題」を再度確認しながら、今日の授業でどういう答え・解決策が生まれてきたかを、板書を参照しながら確認・整理します。

 その上で、子ども一人一人が「今日、新しく学べたこと」「まだよくわからないこと」「もっと知りたいこと」などについて「振り返り」をします。これは、メモをして口頭で発表する場合、ノートに文章で書く場合、振り返りシートに記入する場合などがあります。残り時間にもよりますが、できるだけ何人かの子どもに振り返りを発表してもらいます。


ポイント
 すぐに「振り返り」ではなく、先生と子どもとで探究の過程を確認・整理してから振り返りに入ることが大切です。振り返りの仕方がわからない子どもには、先生が丁寧に援助をします。

 拙著『確かな「学力」を育てるアクティブ・ラーニングを生かした探究型の授業づくり』では、探究型授業を成功させるための指導ポイントや小・中学校の授業例などをご紹介しています!ぜひご覧ください。

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探究型授業をぜひ実践してみてください!最後までお読みいただき、ありがとうございました。

🖌イラスト(1〜4): macrovector / Freepik

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して授業の助言・指導や講演を行なっている。