「スイミー」の授業[2]構造よみ-クライマックスを探る[板書案]

「スイミー」の授業[2]構造よみ-クライマックスを探る[板書案]
今回の教材:「スイミー」レオ=レオニ 作・絵/谷川 俊太郎 翻訳
【国語小2教科書 掲載/光村図書・東京書籍ほか】
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前回は、「スイミー」の構造(導入部-展開部-山場)を捉えました。
今回は、山場の中の山の頂点である「クライマックス」を探していきますクライマックスを捉えると、その物語がどこに向かっていくか展開していくのかが見えてきます。

▶︎「スイミー」の授業 全六回 [1] [2] [3] [4] [5] [6]

※今回は「構造よみ」段階にあたります。未読の方は、先に「物語の新三読法について」と「構造よみの授業」をご覧ください。

「スイミー」のクライマックスを探る授業

1.「スイミー」のクライマックスを考える

 「スイミー」の山場の中でも特に緊迫感を増すのは次の部分です。

 それから、とつぜん、スイミーはさけんだ。
 「そうだ。みんないっしょにおよぐんだ。海でいちばん大きな魚のふりをして。」
 スイミーは教えた。けっして、はなればなれにならないこと。みんな、もちばをまもること。
 みんなが、一ぴきの大きな魚みたいにおよげるようになったとき、スイミーは言った。
 「ぼくが、目になろう。」

 授業では、上記の中から山場の頂点であるクライマックスを探していきます。

 おそらく大きく二つの考え方が出てくると思います。

 A 
 それから、とつぜん、スイミーはさけんだ。
 「そうだ。みんないっしょにおよぐんだ。海でいちばん大きな魚のふりをして。」

 B 
 みんなが、一ぴきの大きな魚みたいにおよげるようになったとき、スイミーは言った。
 「ぼくが、目になろう。」

 Aは、この作品で鍵となる「みんないっしょにおよぐ」というフレーズが入っています。みんなが一緒に泳ぐことで大きな魚(まぐろ)を追い出すことができるのです。
 それに対してBは、「ぼくが、目になろう。」というスイミーのフレーズが印象的です。スイミーが大事な役割を果たすということです。
 どちらも甲乙つけがたいほどクライマックス的な要素を含んでいます。しかし、丁寧に読んでいくと、AかBかに絞ることができます

2.クライマックスと考えた理由を発表しあう

 授業の中では子どもたちに、自分がクライマックスと考えた理由を発表しあってもらいます。その中で子どもたちからは、次のような意見が出てきます。

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Aだと思います。ここでスイミーは叫んでいます。叫ぶのはクライマックスだからです。
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Aです。みんなでいっしょにおよぐことがとても大事で、それを言っているところだからです。
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Bだと思います。これはスイミーのお話です。スイミーが目になることが一番大切だからです。
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Bがクライマックスだと思います。Bではじめて大きな魚になることができたからです。

 どれも良い意見です。
 ただし、この段階ではまだ山場だけしか見ていない子どもが多いのです。そこで作品全体を振り返って読むことを促します

3.物語全体を見ながら、クライマックスを決めるよう促す

 先生はたとえば次のような助言をします。

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とてもいい意見だね。でも、みんな何か忘れてないかな。
クラマックスは物語全体が大きく変わるところです。みんなは山場だけしか見ていないね。物語全体を見てほしいな。全体を振り返ってみて。

 すると子どもたちは、作品を振り返りはじめます。
 そして、導入部に「みんな赤いのに、一ぴきだけは、からす貝よりもまっくろ。」があることに気がつく子どもが出てきます。この一文は、たくさんの技法を使ってスイミーが黒いことを何重にも強調しています。

 さらに、先生が「スイミーたちが大きなお魚になったのはどの文のところだろう?」などと助言すると、「一ぴきの大きな魚みたいにおよげるようになったとき」の部分に気づく子どもも出てきます。
 またAについても、直前の「スイミーはかんがえた。いろいろかんがえた。うんとかんがえた。」との関係に着目する子どもも出てきます。
 授業後半では次のような意見が出てきます。

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Aのすぐ前に「スイミーはかんがえた。」って三回「かんがえた」があって、Aで叫ぶからAは大切です。
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「まえばなし」でスイミーがとっても黒いことを言っています。それがBで役に立つからBです。
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Bには「みんなが、一ぴきの大きな魚みたいにおよげるようになったとき」とあります。ここから大きなお魚になるからBだと思います。
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Aの人もBの人も、山場以外からも山場からもたくさんの大事なところを見つけたね。
Aは「かんがえた。」のあとに「さけんだ」がある。「みんないっしょ」が大切という意見もとてもいいね。
でも、Bでは前ばなしでかかれているスイミーの黒さが生きる。また、大きな魚になるのはBだ。
まだAでは大きな魚になっていないんだね。
つまり、クライマックスはBですね。

 子どもたちは、こういう過程で新しい物語の読み方を学んでいきます。

4.クライマックスの見つけ方を振り返る

 最後に「スイミー」を超えて多くの物語でクライマックスを見つけるための方法を確認します。そうすることで、先生の発問や助言なしでもだんだんと自分の力でクライマックスを見つけられるようになります。これが、国語の力がついていくということです。

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「スイミー」で見つけたクライマックスですが、クライマックスはたくさんの物語にあります。そのときどうやったら自分でクライマックスを見つけられるか考えてみましょう
一つは「物語の中で一番変化があるところ」です。そして、みんなが今日見つけたように前ばなしや広がりがそこにつながるところです。
もう一つは、どきどきしたりして「生き生きとしていて読んでいる人が引きつけられるところ」です。それから「その物語の主題、テーマにつながるところ」です。

 これは、この後読んでいく「わたしはおねえさん」(いしいむつみ)、「モチモチの木」(斎藤隆介)、「ごんぎつね」(新美南吉)などでも使える国語の力です。学習指導要領で重視されている「言葉による見方・考え方」でもあります。

クライマックスを探る板書案

 スイミーのクライマックスを探る授業では、前回のスイミーの物語の構造をかいた板書をベースにします。授業の中で、子どもたちの意見を聞きながら、書き足していきます
 導入部でのスイミーの説明「みんな赤いのに、一ぴきだけは、からす貝よりもまっくろ。」も板書し、クライマックスB案の「ぼくが、目になろう。」と線でつなげて、関連を示します。

 拙著『物語・小説「読み」の授業のための教材研究 ―「言葉による見方・考え方」を鍛える教材の探究―』では、「スイミー」のさらに詳細な教材研究を掲載しています。ぜひご覧ください!

掲載教材:「スイミー」「お手紙」「一つの花」「大造じさんとガン」「海の命」「少年の日の思い出」「字のない葉書」「故郷」

📕注:本文は、小学校国語教科書『こくご二上』(光村図書,2015年)による。教科書の分かち書きを通常の書き方に改めて引用した。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して行った授業の助言・指導、講演は1000回を超える。