物語・小説を「読む力」を育てる指導方法-物語の新三読法[2]構造よみの授業

物語・小説を「読む力」を育てる指導方法-物語の新三読法[2]構造よみの授業
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前回は、物語・小説の指導方法「物語の新三読法」の概要と作品との出会いをつくる「表層のよみ」についてご説明しました。
今回は、物語の新三読法の一段階目「構造よみ」の指導方法や授業について説明していきます。「構造よみ」では、作品の構造を読んでいきます。そこで作品の組み立てや事件の方向性を俯瞰的に把握していきます。

▶︎物語の新三読法:[1]はじめに [2]構造よみ [3]形象よみ [4]吟味よみ

構造よみ=作品の構造を読みとく

 物語の新三読法の一段階目「構造よみ」では、作品の構造を読み解いていきます。
 構造よみの授業では、事件の始まりである「発端」と一番の山場である「クライマックス」への着目がポイントとなります。

1.導入部—展開部—山場—終結部とは

 作品の構造を読みとく際には、全体を「導入部」「展開部」「山場」「終結部」というそれぞれの役割によって区切って考えていくと、よりよく見通すことできます。小学校低学年向けの授業では()内の言い方にします。

導入部(まえばなし)

事件が始まる前に人物の紹介をしたり、日常のようすを説明をしたりする部分。プロローグ。

展開部(ひろがり)

できごとが動き出す事件の前半部分。一進一退があり、事件が広がっていく。

山場(やまば)

クライマックスを含む事件の後半部分。より緊迫感を増し、人物の行動や見方・人物相互の関係が大きく変化する。

終結部(あとばなし)

後日譚や語り手の解説等が示される部分。エピローグ。

2.物語・小説の典型構造

 物語・小説は「導入部—展開部—山場—終結部」になっていることが多いのですが、終結部がないもの、導入部がないものもあります。それらを整理すると、以下のような四つの型に分けることができます。これらはいずれも物語・小説の「典型構造」です。

四部構造

 物語・小説で多く用いられている第一の型が「四部構造」です。「導入部—展開部—山場—終結部」の全てを持つ型です。

四部構造の作品例:「一つの花」(今西祐行)/「海の命」(立松和平)/「故郷」(魯迅) 等

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先生によっては「起・承・転・結」といった用語を使って、この四部構造を指導していることもあるようです。この「起・承・転・結」も悪くはないのですが、これはもともとは詩(漢詩)の典型構造ですので、物語・小説には「導入部・展開部・山場・終結部」のような用語の方がふさわしいと考えます。

三部構造A

 続いて、三部構造です。三部構造には、AとBの二つの型があります。「三部構造A」は、終結部がなく「導入部—展開部—山場」で構成されるものです。この型も多くの物語や小説で用いられています。

三部構造Aの作品例:「スイミー」(レオ=レオニ)/「ごんぎつね」(新見南吉)/「少年の日の思い出」(H=ヘッセ) 等

三部構造B

 「三部構造B」は、導入部がなく「展開部—山場—終結部」で構成されるものです。

三部構造Bの作品例:「お手紙」(A=ローベル)/「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ)/「握手」(井上ひさし) 等

二部構造

 それほど多くありませんが、導入部も終結部もなく「展開部—山場」だけで構成される「二部構造」の物語・小説もあります。

二部構造の作品例:「カレーライス」(重松清)/「盆土産」(三浦哲郎) 等

 以上が、物語・小説の典型構造の種類です。
 作品の典型構造を理解・把握することによって、作品全体の構成や形象相互の大きな関係性を考えながら読むことが可能になり、それまで気づかなかった作品の面白さや仕掛けが見えてきます。

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物語・小説の典型構造を授業で学ぶには「化けくらべ」を使うのがおすすめです。小学二年生〜高校三年生まで幅広く使うことができる教材です。
「化けくらべ」本文と教材研究については拙著『増補改訂版 国語力をつける物語・小説の「読み」の授業 ―「言葉による見方・考え方」を鍛えるあたらしい授業の提案』に詳しく書いています。ぜひご覧ください。

構造よみの授業のポイント

 構造よみの授業では、事件の始まりである「発端」と一番の山場である「クライマックス」への着目がポイントとなります。

 発端がわかると、その事件の大枠が見えてきます。そして、クライマックスがわかると、事件のもつ意味や伏線が見えてきて、作品の主題(テーマ)に近づきやすくなります。

1.発端への着目

 「発端」(じけんのはじまり)とは、事件が起こり、物語が展開し始める最初の箇所のことです。

 授業では、「発端」を探していきます。発端は、比較的見つけやすいのですが、それで終わりではありません。「なぜそこが発端なのだろうか?」「根拠を3つ以上見つけよう」などと、本文にその証拠を見つけていきます。そうすることで、その作品の事件の大枠がだんだんと見えてきます。

 発端を探す中で、次のような発端への着目の指標を少しずつ指導していきます。

発端の指標

「発端」の特徴-着目の指標

  1. 主要な事件がそこから始まる。
  2. 主要な人物同士がそこで出会う。
  3. 人物がこれまでにない状況とそこで出会う。
  4. 日常とは違ったことがそこから起きる。
    日常→非日常的
  5.  説明的な書かれ方から、描写的な書かれ方にそこから変わる。
    長い間の出来事を短くした「まとめ書き」から
     →ある日ある時のリアルタイムの様子「あるがまま書き」へ

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「スイミー」の授業[1]構造よみ-作品の構造を考える[板書案]では、発端に着目させる発問例をご紹介しています。

2.クライマックスへの着目

 「クライマックス」は、山場の中に含まれ、物語全体でも一番大きな変化がある箇所です。

 クライマックスも発端同様、授業の中で探していきます。作品によっては、クライマックスでかなり意見が割れることがあります。その意見の相違こそがすばらしいのです。そこから話し合い、意見交換、そして討論が始まります。

 常に本文に戻り、本文に証拠を求めながら「クライマックスはどこか」を探究していくことで、作品の伏線やさまざまな仕掛けが鮮やかに見えてきます。

 クライマックスを探す中で、次のような発端への着目の指標を少しずつ指導していきます。

クライマックスの指標

クライマックスの指標は次のとおりです。

「クライマックス」の特徴-着目の指標

  1. 事件の流れがそこで決定的となる。
    大別して「破局→解決」と「解決→破局」とがある。
  2. 伏線がそこに収斂される。
    一見ばらばらに見える導入部や展開部の伏線がクライマックスで回収される。
  3. 読者により強くアピールする書かれ方になっている。
    そのため、描写性の密度が特に濃い。
    緊迫感・緊張感が高い。
    技法(レトリック)や表現上の工夫がされていることが多い。
  4. 作品の主題に深く関わる。
    主題に関わり、作品によっては題名につながることがある。

  構造よみで作品の全体像が見えてきます。それが次の形象よみ、吟味よみに生きてきます。

  拙著『増補改訂版 国語力をつける物語・小説の「読み」の授業 ―「言葉による見方・考え方」を鍛えるあたらしい授業の提案 』では、様々な教材を引用しながら物語・小説の指導過程について丁寧に解説しています。
 更に「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」については詳しい教材研究を載せています。ぜひご覧ください!

掲載教材:「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して授業の助言・指導や講演を行なっている。