「スイミー」の授業[1]構造よみ-作品の構造を考える[板書案]

「スイミー」の授業[1]構造よみ-作品の構造を考える[板書案]
今回の教材:「スイミー」レオ=レオニ 作・絵/谷川 俊太郎 翻訳
【国語小2教科書 掲載/光村図書ほか】
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「スイミー」は、小学校低学年の教科書の定番教材の一つです。
これから六回にわたって、「スイミー」の授業で役立つ教材研究や発問例を提案していきます

まず、「スイミー」をより深く読むためには、作品の全体像を捉えていくことが大切です。
「場面ごとにお話を追っていく」だけだと、単調な授業になりがちですが、作品の構造に着目し、授業を進めることで、子どもの作品への理解が深まり、より面白さを感じやすくなります。

▶︎「スイミー」の授業 全六回 [1] [2] [3] [4] [5] [6]

※今回は「構造よみ」段階にあたります。未読の方は、先に「物語の新三読法について」と「構造よみの授業」をご覧ください。

「スイミー」(レオ=レオニ)とは?

 「スイミー」は、レオ=レオニの絵本作品です。
 レオ=レオニ(1910~1999年)は、オランダ出身でアメリカ合衆国の絵本作家です。
 「スイミー」は、1963年にアメリカ合衆国で単行本として出版され、日本では谷川俊太郎の訳で1969年に出版されています。
 教科書には1977年から光村図書の小2国語教科書に掲載され、現在に至っています。作者自身による挿絵が、絵本でも教科書でも使われています。

「スイミー」の導入部(まえばなし)

 「スイミー」は、次のような導入部から始まります。平和な小さな魚たちの様子と、主人公スイミーの紹介です。
 導入部を捉え、その後の事件との違いを意識することで作品が理解しやすくなります。

 広い海のどこかに、小さな魚のきょうだいたちが、たのしくくらしていた。
 みんな赤いのに、一ぴきだけは、からす貝よりもまっくろ。およぐのは、だれよりもはやかった。
 名前はスイミー。

「スイミー」の展開部(ひろがり)

 そこに突然大きなまぐろがつっこんできて、一口で小さな赤い魚たちをのみこんでしまいます。
 ここが、この作品の発端です。発端に着目すると、事件の全体像が見えてきます。

 ある日、おそろしいまぐろが、おなかをすかせて、すごいはやさでミサイルみたいにつっこんできた。
 一口で、まぐろは、小さな赤い魚たちを、一ぴきのこらずのみこんだ。
 にげたのはスイミーだけ。

 スイミーは、怖く寂しく悲しい気持で海の底を泳ぎます。しかし、海にはすばらしいものがいっぱいあって、スイミーを少しずつ元気にしてくれます。

 にじ色のゼリーのようなくらげ。
 水中ブルドーザーみたいないせえび。
 見たこともない魚たち。見えない糸でひっぱられている。
 ドロップみたいな岩から生えている、こんぶやわかめの林。
 うなぎ。かおを見るころには、しっぽをわすれているほど長い。
 そして、風にゆれるもも色のやしの木みたいないそぎんちゃく。

例)発端に着目させる発問

 発端をさがす授業では、次のような発問が生きます。

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はじめにまえばなしがあるけど、それが終わって事件が動き出すのはどこ?

 子どもたちは、たとえば次のように発言します。

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まぐろが出てくるところ。
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小さな魚たちが食べられるところ。
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その前まではどういうふうに暮らしていた?
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楽しくくらしていた。
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そういう平和が毎日を破ってまぐろがおそってくるんだね。
こういうところを「じけんのはじまり」って言うんだよ。

「スイミー」の山場(やまば)

 そして、スイミーは新しい小さな魚の兄弟たちと出会います。ここからが山場です。山場には、事件の最大の転換点であるクライマックスがあります。

 そのとき、岩かげにスイミーは見つけた、スイミーのとそっくりの、小さな魚のきょうだいたちを。

 小さな魚の兄弟たちはスイミーが「出てこいよ。」と呼びかけても、「だめだよ。大きな魚にたべられてしまうよ。」と言って出てこようとはしません。そこでスイミーは、どうしたらいいか考え続けます。

 スイミーはかんがえた。いろいろかんがえた。うんとかんがえた。

 そして、次が来ます。

 それから、とつぜん、スイミーはさけんだ。
 「そうだ。みんないっしょにおよぐんだ。海でいちばん大きな魚のふりをして。」
 スイミーは教えた。けっして、はなればなれにならないこと。みんな、もちばをまもること。
 みんなが、一ぴきの大きな魚みたいにおよげるようになったとき、スイミーは言った。
 「ぼくが、目になろう。」

 この部分にこの作品のクライマックスが含まれています。そして、最後は大きな魚を追い出します。そこが事件の結末であり、作品の終わりです。
 作品によっては、その後に終結部(エピローグ)があることもあります。「スイミー」には終結部がありません。

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「スイミー」は、物語・小説の典型構造のうち、「三部構造A(導入部—展開部—山場)」にあたります。物語・小説の典型構造についてはこちらをご覧ください。

例)山場のはじまりに着目させる発問

 山場のはじまりをさがす授業では、次のような発問が生きます。

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山場のはじまり、つまり事件が盛り上がってくるのはどのへんからかな?
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小さな魚たちと出会うところ。
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なかまを見つけるところ。
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そこから何がはじまるの?
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力を合わせて大きな魚を追い出す
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そうだね。そこから盛り上がってくるね。こういうところを「山場」って言うんだよ

 板書を見て確認をします。そして、次のようにまとめます。

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このように「スイミー」は前ばなし-広がり-山場の成り立ちになっているんだね。

「スイミー」の構造を学ぶ板書案

 「スイミー」の構造を板書に落とし込むとこのようになります。

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作品の構造がわかると、各部分・各場面と全体との関係がわかり、物語をより深く理解しやすくなります。
・導入部では人物紹介などを読む
・展開部では事件の一進一退を読む
・山場では事件の一番の大きな変化に注目する
など、その部分でどういうことを大切に読んでいったらよいかもわかってきます。
山場の中の「クライマックス」がわかると、その理解がもっと深くなります。
次回は「スイミー」のクライマックスはどこなのかを考えていきたいと思います。

 拙著『物語・小説「読み」の授業のための教材研究 ―「言葉による見方・考え方」を鍛える教材の探究―』では、「スイミー」のさらに詳細な教材研究を掲載しています。ぜひご覧ください!

掲載教材:「スイミー」「お手紙」「一つの花」「大造じさんとガン」「海の命」「少年の日の思い出」「字のない葉書」「故郷」

📕注:本文は、小学校国語教科書『こくご二上』(光村図書,2015年)による。教科書の分かち書きを通常の書き方に改めて引用した。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して行った授業の助言・指導、講演は1000回を超える。