授業の「振り返り」どうやるの?子どもたちの主体性を育てる「振り返り」のポイント

授業の「振り返り」どうやるの?子どもたちの主体性を育てる「振り返り」のポイント
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授業の終わりに毎回「振り返り」を行っているけれど、
ただなんとなくお決まりの作業になってしまっている
感想を書かせて終わりになっている
効果的な振り返りが分からない
など「振り返り」に関するご相談を多くいただきます。

今回は、授業における振り返りの目的や振り返りを効果的に行うポイントについて考えていきます。

授業における「振り返り」の目的とは?

 対話を重視した授業や探究型授業が重視されるようになり、授業のおわりに「振り返り」を位置付けられることも多くなってきました。
 しかし、なんとなくルーティンワーク的になっていて、感想を書かせて終わりになってしまっているという声も先生方から多く聞きます。

 そもそも授業における振り返りの目的とは何なのでしょうか。
 わたしは大きく3つあると考えています。

振り返りの目的

  1. その時間の学びを「定着」させつつ深める
    その時間の学びを振り返ることで定着を確かなものにします。また、その学びをさらに深めることができます。
  2. その時間の学びを「文脈化」する
    その時間の学びがこれまでの学びとどうつながっているのかを考えることができます。
  3. その時間の学びを「自分の生活に位置付ける
    学びが自分の言語生活の中でどんな意味を持つか考え、応用することができます。

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上記の3つの目的は1→3に向かうにつれ、より高度になっていきます。

 では、どのように「振り返り」を行えば、上記の目的を達成できるのでしょうか。

子どもたちの主体性を育てる「振り返り」2つのポイント

 振り返りの際、「この時間の振り返りを書いてごらん。何を書いてもいいよ。」と言われても、子どもたちは何をどんなふうに書けばよいのか戸惑ってしまいます。

 そのため、「新しいことを勉強できた」「発言できてよかった」「がんばった」「新しいことがわかった」と曖昧で抽象的な振り返りになってしまいます。また、学習内容に直接かかわることのない振り返りになることも少なくありません。

 効果的な振り返りを行わせるためには、次の2つのポイントを意識することが大切です。

ポイント1:「何」を振り返ればよいのか具体的に助言する

 「振り返り」3つの目的を意識しながら、本時の学びの中で「何」について振り返りをすればよいのか、何を書けばよいのかを、先生が子どもたちに具体的に助言します。

1.学びを「定着」させつつ深める指導例

例えば、「ごんぎつね」のクライマックスに着目する授業の振り返りであれば…

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今日は「ごんぎつね」のクライマックスに着目したね。
クライマックスについての今日の一番の発見を中心に書いてみて。
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想定する振り返り例
①「クライマックスは兵十のごんへの見方が大きく変わったところだとわかった。」
②「ごんの見方と兵十の見方が、ばらばらから一つになるところがクライマックスだと勉強した。
「ごんと兵十の関わりが事件の中心で、その関わりが変化するところがクライマックスだとわかった。」

2.学びを「文脈化」する指導例

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今日は「ごんぎつね」のクライマックスに着目したね。
今までもクラマックスを学んできたけど、今日の授業でクライマックスについて新しく知ったこと・発見したことを書いてみよう。
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想定する振り返り例
①「クライマックスは、物語が盛り上がるところというだけではなく、それまでの関係が大きく変わるということがわかった。
「クライマックスは山場だけを見るだけでなく、展開部など前に戻ってつながりを見ることが大切ということを勉強した。」
「『伏線』という言葉を覚えた。それがクライマックスにつながっているとわかった。

3.学びを「自分の生活に位置付ける」指導例

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今日は「ごんぎつね」のクライマックスに着目したね。
クライマックスの特徴を勉強したけど、今まで読んだ物語や漫画に応用できそうなことはないかな。
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想定する振り返り例
①「クライマックスを読むとき、前に戻るといいとわかったので、いつも読んでいる漫画でも前に戻って読んでみたいと思った。」
「よく漫画とかでも『フラグが立つ』とかいうのを聞くけれど、それが伏線と似ていると思った。これからは、伏線とクライマックスを意識しながら読んでみたい。」

 先生は想定する振り返りを意識しながら、子どもたちに振り返りの助言を行います。

ポイント2:いい振り返りは学級全体に共有し、どこがいいか示す

 先生が「お!これは!」と思ういい振り返りは、学級全体に共有し、どこがいいのか示してあげることも有効です。

 例えば、次の授業の最初などにいい振り返りを紹介します。それだけではなく、なぜいい振り返りだといえるのかを先生が意味づけてあげます

 それによって、子どもたちは効果的な振り返りを学んでいきます。

 子どもたちが「振り返り」に慣れてくると、教師が多くをアドバイスしなくても徐々振り返りを主体的に書けるようになってきます。

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先生自身が授業の振り返りを何パターンか事前に書いてみるのも効果的です。
それによって「振り返り」がしやすい学習、意外と難しい学習などがわかってきます。そして、想定する「振り返り」を子どもたちが書くにはどんな助言が有効かを逆算して考えていきます。

重要な学習過程として「振り返り」の指導を意識化する、このことが大切です。ぜひ実践してみてください!

  拙著『増補改訂版 国語力をつける物語・小説の「読み」の授業 ―「言葉による見方・考え方」を鍛えるあたらしい授業の提案 』では、様々な教材を引用しながら物語・小説の指導過程について丁寧に解説しています。
 「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」については詳しい教材研究を載せています。

掲載教材:「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して授業の助言・指導や講演を行なっている。