「読む力」を育てる!説明文・論説文の指導方法-説明的文章の新三読法[4]吟味よみ

「読む力」を育てる!説明文・論説文の指導方法-説明的文章の新三読法[4]吟味よみ
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前回は、説明的文章の新三読法のニ段階目「論理よみ」の指導方法について説明しました。

今回は、説明的文章の新三読法の最終段階「吟味よみ」の指導方法について説明していきます。「吟味よみ」では、文章の優れた点や不十分な点を吟味していきます。
「こまを楽しむ」「すがたをかえる大豆」「花を見つける手がかり」「生き物は円柱形」「魚の感覚」を例にしながら、さまざまな吟味の視点を紹介していきます。

物語・小説の指導方法「物語の新三読法」はこちら

吟味よみー文章を主体的に吟味・評価する

 説明的文章の新三読法の最終段階「吟味よみ」では、文章の工夫や優れた点を評価したり、不十分な点や問題点をクリティカル・リーディング(批判的読解)で吟味したりしていきます。
 これまでの構造よみ、論理よみを生かしながら、読みをさらに深めていきます。

なぜ文章の吟味・評価が必要なのか

 私たちは文章を読む時、その内容に寄り添いながら読んでいます。
 しかし、それだけでは主体的な読みとは言えません文章の工夫・優れた点や分かりにくい点・不十分な点を吟味・評価をする読みも必要なのです。

 吟味・評価する際には、まず文章を対象化する必要があります。それによって、さまざまな角度からより深く文章を読み解けるようになります。

 また、情報や意見・主張を鵜呑みにせず、主体的にそれらを判断できるようになります。同時に子どもたちはそれらを生かして、わかりやすく説得力のある文章を書く力を身につけていきます。

 そのためには、構造を読む方法、論理を読む方法を生かしながら、さまざまな吟味・評価の方法を子どもたちに丁寧に指導していく必要があります。

「説明文」と「論説文」それぞれの吟味ポイント

 説明文と論説文では、吟味のポイントもそれぞれ異なります。(説明文と論説文の違いはこちら)

 吟味よみでは、説明文では「わかりやすかったか」「わかりにくかったか」、論説文では「納得できたか」「納得できなかったか」を、子どもたち自身を判断することが大切です。

 ただし、それで終えずに「なぜわかりやすいと思ったのか」「なぜ納得できなかったのか」等の根拠を、本文の一語一文にもとづいて見つけていきます。

文章吟味のための視点

 文章の吟味・評価を子どもたちが主体的に行っていくことができるように、授業ではそのための方法を具体的に指導していきます。

文章の工夫・優れた点に着目する視点

 文章の工夫・優れた点を吟味するための2つの視点を紹介します。

1.文章の構造上の工夫はあるか

 「構造よみ」を生かした評価を行なっていきます。
 たとえば、(1)はじめ・なか・おわり相互の対応関係のわかりやすさ(2)なかの事柄の順序の工夫(3)構造上の対比の工夫などに着目します。

例)「こまを楽しむ」(光村図書出版・小3)の場合

 「こまを楽しむ」のはじめ・なか・おわり相互の対応関係の工夫に着目してみます。
 「こまを楽しむ」では、はじめ(第1段落)で次のような文章全体にかかわる問題提示を行います。

1⑤では、どんなこまがあるのでしょう。⑥また、どんな楽しみ方ができるのでしょう。

 なか1(第2段落)〜なか6(第7段落)の①文目でそれぞれ「どんなこま」「どんな楽しみ方」の答えを示しています。

2色がわりごまは、回っているときの色を楽しむこまです。

3鳴りごまは、回っているときの音を楽しむこまです。

 そして、おわり(第8段落)どんなこま」「どんな楽しみ方について、次のようにまとめます。

8①このように、日本には、さまざまなしゅるいのこまがあります。(中略)③人々は、このつくりにくふうをくわえ、回る様子や回し方でさまざまな楽しみ方のできるこまをたくさん生み出してきたのです。

 このような、はじめ・なか・おわり相互の明快な対応の工夫があることで、読者の内容の理解が進みます。

2.論理関係の工夫はあるか

 「論理よみ」を生かした評価を行なっていきます。
 (1)柱と柱以外の提示の工夫(2)具体例の提示の工夫(3)論理についての対比の工夫(4)表現上の工夫(5)写真や図表の提示の工夫などに着目します。

例)「こまを楽しむ」(光村図書出版・小3)の場合

 「こまを楽しむ」のなか1(第2段落)の柱と柱以外の提示の工夫、具体例の提示の工夫に着目してみます。

2色がわりごまは、回っているときの色を楽しむこまです。
こまの表面には、もようがえがかれています。
ひねって回すと、もように使われている色がまざり合い、元の色とちがう色にかわるのがとくちょうです。
同じこまでも、回す早さによって見える色がかわってきます。

 なか1の柱の文である①文では、「こまの種類(名前)と楽しみ方」を提示しています。
 次に②文で「こまが回っていない(静止している)ときの様子や作り」を示します。
 そして、最後に③・④文で「こまが回っている(動いている)様子」を提示しています。これを、回っている様子を先に示し、後から静止しているときの作りを示すようにしてしまうと、読者が混乱する可能性があります。

 また、これらの文の順序はなか1〜なか6全てで共通しています。そのため、読者はスムーズに内容を理解していくことができるのです。

不十分な点・問題点に着目する視点

 文章に不十分な点・問題点はなかったかをクリティカル・リーディング(批判的読解)で吟味していきます。そのための4つの視点を紹介します。

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Point 
クリティカル・リーディングは、OECDのPISA「読解力」問題でも重視されています。「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」などという観点で問題が作成されています。(残念ながら2018年のPISA調査で日本の子どもたちは、これらの問題の正答率が特に低かったのです。)

また、2017・2018年の学習指導要領・国語で「文章を批判的に読みながら、文章に表れているものの見方・考え方について考えること」が明記されました。「情報を精査」することも重視されています。

1.語彙や表現は適切か

 筆者は文章を書く上で、さまざまな選択の可能性がある中でその語彙・表現を選択しています。その妥当性を検討します。
 より具体的には(1)選択された語彙・表現には曖昧性や恣意性がないか(2)程度・限定の表現が曖昧・不正確でないかを吟味していきます。

例)「生き物は円柱形」(光村図書出版・小5)の場合

 「生き物は円柱形」では、はじめ(序論)で「生き物は円柱形」という仮説を述べた上で、なか(本論)で論証を展開していきます。様々な具体例を提示した後に円柱形の「速さ」について述べていきます。

①円柱形は、強いだけでなく、速い形でもある。②ミミズが円柱形をしているのは、土の中を進んでいくときのていこうが少なく、楽に進めるからである。③時速百キロメートルものスピードで泳ぐマグロは、円柱形の胴体で、前と後ろが少し細くなっている。

 注目したいのはマグロの形状です。マグロを「円柱形」と言ってもいいのでしょうか。マグロは頭の部分が尖っており、むしろ「円錐形」に近いはずです。そして円錐形の形状が、マグロの速さにかなりの程度役立っていることが推測されます。胴体も本当に「円柱形」と言えるのかにも若干の疑問があります。

 これはそもそもマグロを例として選択したことが妥当なのかどうかという吟味にもつながります。

2.「事実」の提示・選択は適切か

  文章で実際にあった出来事や現象を取り上げる場合、筆者は一定の基準で取捨選択をして、それら「事実」として提示します。その「事実」の取捨選択の妥当性を吟味します。
 文章で(1)選択された「事実」に典型性はあるか(2)選択された「事実」に過剰・不足はないかを吟味していきます。

例)「すがたをかえる大豆」(光村図書出版・小3)の場合

 「すがたをかえる大豆」のなか(本論)では、さまざまな大豆の食べ方の工夫を説明します。その際に選択した食品は、煮豆、きなこ、豆腐、納豆、味噌・醤油、枝豆などです。

 しかし、大豆加工品で生産量がもっとも多いのは「大豆油」です。つまり大豆が一番多く「すがたをかえ」ているのは大豆油ということになります。ところがこの文種では、大豆油については一切書かれていません。その事実の選択が適切かを吟味することができます。

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Point 
「大豆油」を取り上げなかったことについては、子どもたちにとってよりわかりやすい食品を選択したという意味で妥当であるという見方もあります。
吟味よみでは、「大豆油」を入れた方がよかったという意見、オリジナルの方がよいと意見、根拠があればいずれも認められてよいと思います。

授業では、ほぼ全員が一致する吟味もあれば、そのように子ども(読み手)によって見解が分かれる吟味もあります。決して「なんでもあり」ということではありませんが、そこは柔軟に指導していくことが大切です。

3.根拠・解釈・推論に論理の飛躍はないか

 論説文では、筆者は自らの見解・解釈の根拠を示します。また、いくつかの前提に基づいて、さまざまな推理をしていきます。その妥当性を検討します。
 より具体的には(1)別の根拠・解釈・推理の可能性を無視していないか(2)因果関係に問題はないかを吟味していきます。

例)「花を見つける手がかり」(教育出版・小4)の場合

 「花を見つける手がかり」は、蝶がどのようにして花を見つけるかについて述べたものです。
 はじめに「におい」、つぎに「形」を手がかりにしているという可能性を実験によって消去します。そして、最後の実験で、形が四角く、においのない色紙を四色用意し、蝶が集まるかを調べます。その実験で蝶は「色」を見分けて飛んでくることを突き止めます。
 最後の実験とその考察が書かれているのがなか4(本論4)です。その後半は次のとおりです。

13 ①集まり方を色別に調べてみました。②最も多く集まったのがむらさき、次に多かったのが黄色、青に来たものは少なく、赤には、ほとんど来ませんでした。③念のため、赤い色紙にみつをつけたものを用意してみましたが、これにもちょうは来ませんでした

14このような実験から、もんしろちょうは、色を手がかりにして花を見つけることがわかりました。②そして、色も見分けることができるようで、むらさきや黄色は見つけやすく、赤は見えないらしいのです。

 第13段落では、赤い色紙に蝶が来なかったことが書かかれています。その事実に基づき、第14段落では「赤は見えないらしい」と述べています。

 この解釈は妥当でしょうか。蝶には、赤が見えないという可能性ももちろん否定できません。しかし、蝶に赤は見えるが、好む色でないので集まらないという可能性も考えられます。その可能性を無視して「見えないらしい」と推理してしまっています。

別の根拠・解釈・推理の可能性を無視していないかの吟味をすることができます。

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Point 
文章に不十分な点や問題点があるからといって、その文章はよくない、仮説に納得できないということになるわけではありません。その文章への総合的な評価は、優れた点・不十分な点を総合しながら、ひとりひとりの読み手が主体的に判断すべきものだと考えます。

4.ことがら相互・推論相互の不整合はないか

 筆者は複数のことがらを提示したり、推論を行なったりしながら文章を展開していきます。それらに不整合や矛盾がないかを検討します。
 より具体的には(1)同じ対象を示している語意相互に不整合・矛盾はないか(2)解釈・推論相互に不整合はないかを吟味していきます。

例)「魚の感覚」(学校図書・小5)の場合

 「魚の感覚」では、魚は音が聞こえるかということを調べるため、ラドクリッフ博士がますの養魚場にやってきて観察をします。その養魚場では毎朝同じ時間に鳴る教会の鐘でますが集まっているという話を聞いたためです。
 その結果が次です。

12①やがて、教会のかねが鳴りだしました。②すると、えさ場付近が、にわかにさわがしくなって、ますが集まってきました。③口を水面に出して、たがいに他をおしのけるようにして寄り集まったため、まるで、夕立がかわいた木の葉をたたくような、やかましい水音がしています。④これで、魚が音を聞き分けるということが、はっきりわかったわけです。⑤ラドクリッフ博士も、これを見て、自分の考えを変えないわけにはいきませんでした。

 注目すべきは④文です。「これで、魚が音を聞き分けるということが、はっきりわかったわけです。」とあります。
 それまでこの文章では、魚には音が「聞こえる」かどうかを問題にしていました。しかし、この12段落④文(柱の文)で急に「聞き分ける」に変わっています。「聞こえる」と「聞き分ける」の差異を事実上無視していることになります。
 もともと、この観察からは魚には音が「聞こえる」までは言えても「聞き分ける」までは言えないはずです。「聞き分ける」という結論を出すためには、もっと別の観察・実験をしなければならないはずです。
 解釈・推論相互に不整合はないかを吟味することができます。

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以上が、説明的文章の新三読法:構造よみ―論理よみ―吟味よみの指導方法です。
この指導の中で子どもたちは、説明的文章を自力で読んでいくための高度な方法を確実に身につけていきます
ご感想やご意見・分かりづらい点などございましたらぜひこちらのフォームよりお寄せください。サイト運営の参考にさせていただきます。
また、授業で使った報告などもいただけると大変励みになります。お待ちしております!

 拙著『文章吟味力を鍛える—教科書・メディア・総合の吟味』では、評価する力と批判する力の双方を含む「吟味力」の理論や実践例を解説しています。

📕注:「こまを楽しむ」(安藤正樹)本文は、小学校国語教科書『国語三・上』(光村図書出版,2020年)による。
「すがたをかえる大豆」(国分牧衛)本文は、小学校国語教科書『国語三・下』(光村図書出版,2020年)による。
「生き物は円柱形」(本川達雄)本文は、小学校国語教科書『国語五 銀河』(光村図書出版,2015年)による。
「花を見つける手がかり」(吉原順平)本文は、小学校国語教科書『ひろがる言葉 小学国語 4上』(教育出版,2002年)による。
「魚の感覚」(末広恭雄)本文は、小学校国語教科書『小学校 国語 五年下』(学校図書,1981年)による。
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執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して授業の助言・指導や講演を行なっている。