物語・小説の「語り手」の視点 — 三人称の語り・一人称の語りとは?

物語・小説の「語り手」の視点 — 三人称の語り・一人称の語りとは?
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物語・小説を読み深める際には「語り手」への着目が大切です。
「語り手」を意識することで、より豊かに作品を読むことが可能になります。
物語・小説の語り手は、「三人称」「一人称」に分けることができます。
二人称の語りの作品もありますが、非常に少ないため、今回は三人称と一人称に絞って説明します。

「三人称の語り」とは

 まずは、「三人称の語り」です。物語・小説で最も多く用いられる語りの形です。

「三人称の語り」とは...

登場人物ではない語り手が三人称(「彼女」「メロス」等)を用いて、物語世界を語る。

1.「三人称の語り」の特徴とは

  「三人称の語り」には、次のような特徴があります。

  1. 「語り手」は登場人物や事件を描いたり説明したりするが、同時に人物の内面に入り込むこともできる。
  2. 「語り手」は物語世界には登場しない。
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三人称の語りは、登場人物への内面への入り方によって3つに分けることができます。

2.「三人称の語り」は三つに分けられる

三人称 全知視点

 事件や人物のようすを述べるだけでなく、主要人物たちの内面に出入りできる視点をもつ三人称の語り神のような視点、とも呼ばれる。

教科書教材例:「お手紙」(アーノルド・ローベル)/「山月記」(中島敦)

三人称 限定視点

 事件や人物のようすを述べるだけでなく、特定の主要人物の内面を出入りできる視点をもつ三人称の語り。(章や場面によって、内面に入る人物が変わる作品も含む。)三人称の語りの中でも、多くが「限定視点」を用いている。

教科書教材例:「スイミー」(レオ=レオニ)/「大造じいさんとガン」(椋鳩十)

三人称 客観視点

 事件や人物のようすを述べるだけで、人物の内面に入らない三人称の語り。

教科書教材例:「一つの花」(今西祐行)

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「語り」には作品の意図やしかけが多く含まれています
おなじ「三人称の語り」でも
・人物の内面に入っているか・入っていないのか
・誰の内面に入っているのか・誰の内面に入っていないのか

・誰に寄り添って語られているのか、など意識することでより深く豊かに作品を読むことができるのです。

「一人称の語り」とは

 次に「一人称の語り」です。

「一人称の語り」とは...

登場人物(主人公)自身が一人称(「私」「ぼく」等)の語りで物語世界を語る。

1.「一人称の語り」の教科書教材例

 一人称の教科書教材には次のようなものがあります。

「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ/髙橋健二 訳)

僕は、八つか九つのとき、ちょう集めを始めた。

「きつねの窓」(安房直子)

 いつでしたか、山で道に迷った時の話です。ぼくは、自分の山小屋にもどるところでした。

「故郷」(魯迅)

 明くる日の朝早く、私は我が家の表門に立った。

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夏目漱石の「吾輩は猫である」も一人称の作品です。

2.「一人称の語り」の特徴とは

 「一人称の語り」には、次のような特徴があります。

  1. 主人公自身の思い・感じ方などが直接に示される。
  2. 主人公からみた事件や人物像が示される。
  3. 主人公以外の見え方は見えにくい。

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例外もありますが、多くの場合上記のような特徴があります。
次に授業での着目ポイントをご紹介します!

3.「一人称の語り」の授業での着目ポイント

 たとえば授業では「一人称の語り」の次のような点に着目します。

「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ/髙橋健二 訳)の場合

 下記は、登場人物・エーミールについての説明です。エーミールという少年を「悪徳」「気味悪い性質」とかなり否定的に評しています。

この少年は非の打ちどころがないという悪徳をもっていた。それは、子供としては二倍も気味悪い性質だった。

 「一人称の語り」が採用されている本作においては、上記で説明されるエーミールは、あくまでも「僕」(語り手)からみえている一面的なエーミール像であることを留意する必要があります。

僕(語り手)からみた一面的なエーミール像

 そのため、別の立場からみえるエーミール像は大きく違う可能性があります。たとえば、第三者からみたエーミール像・彼自身のエーミール像などです。
 それらを考え比べることによって、読みがより豊かになります。

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これらの指導は、単元の最後に位置付ける「吟味よみ」で行うのがおすすめです。
もう一つ、「語り」の読みの視点を。
「少年の日の思い出」では、導入部と展開部以降で語り手が変わります。なぜ変わるのか、それによって生まれる効果についても考えることができます。

「一人称の語り」と「三人称の語り」の違いとは

 「一人称の語り」と「三人称の語り」の違いをまとめると次のようになります。

\私は・僕は/
一人称の語り
\メロスは・彼女は/
三人称の語り
語り手語り手は
物語世界に登場する
語り手は
物語世界に登場しない
内面語り手自身の
内面を語る
登場人物の
内面に入る場合、
入らない場合がある
見え方一面的
な見え方になりやすい
多面的
な見え方が可能
読者読者が主人公に
直接的に同化
することができる

読者と主人公の
距離がより近い
読者が主人公に
語り手を通して同化
することができる

読者と主人公の間に
語り手がいる

  拙著『増補改訂版 国語力をつける物語・小説の「読み」の授業 ―「言葉による見方・考え方」を鍛えるあたらしい授業の提案 』では、様々な教材を引用しながら物語・小説の指導過程について丁寧に解説しています。
 更に「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」については詳しい教材研究を載せています。ぜひご覧ください!

掲載教材:「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「語り」に着目すると、いつも読んでいる物語や小説を異なる角度から楽しむことが可能になります。
ご感想やご意見・分かりづらい点などございましたらぜひこちらのフォームよりお寄せください。サイト運営の参考にさせていただきます。
また、授業で実践した報告などもいただけると大変励みになります。お待ちしております!

📕注:「少年の日の思い出」「故郷」本文は、中学校国語教科書『国語1』『国語3』(光村図書,2021年)による。
「きつねの窓」本文は、小学校国語教科書『ひろがる言葉 小学国語 六下』(教育出版,2020年)による。
下線・太字は「国語授業の研究ノート」による。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して行った授業の助言・指導、講演は1000回を超える。