「スイミー」の授業[6]吟味よみ-さまざまな角度から再読し、評価する

「スイミー」の授業[6]吟味よみ-さまざまな角度から再読し、評価する
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前回は、「スイミー」の山場の鍵を読み深め、主題へと迫っていきました。
「スイミー」の授業も終盤です。
最後にこれまでの読みを生かして、「スイミー」を主体的に評価していきます。

▶︎「スイミー」の授業 全六回 [1] [2] [3] [4] [5] [6]
 
※今回は「吟味よみ」段階にあたります。未読の方は、先に「物語の新三読法について」と「吟味よみ授業」をご覧ください。

「スイミー」を吟味・評価する

 「スイミー」のこれまでの読みを生かして、作品を再読し、子どもたちが作品を評価していきます。
 その中で有効な指導をいくつか紹介します。

1.「スイミー」で好きなところを見つける

  低学年の場合、特に「この作品で好きなところ」「この作品の工夫で一番よいと思うところ」「一番感動した場面」などを、構造よみ・形象よみを振り返りながら見つけ出すことが有効です。
 「一ぴきだけは、からず貝よりもまっくろ。」が、クライマックスで生かされるということの意味、「にじ色のゼリーのような」などの比喩や体言止めの面白さ、度々出てくる倒置法の面白さや効果などを再読し吟味します。作品と挿絵の関係について吟味・評価してもよいでしょう。

例)「スイミー」で好きなところを見つける発問

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「スイミー」を読んできましたが、作品の中で一番好きなところはどこだろう。
一番好きなところを鉛筆で囲み、その理由と一緒に考えてみよう。

2.「スイミー」の主題について考える

 「スイミー」の授業の中で見出した以下の三つの主題の中で、「自分はその中のこのテーマが一番好き」「一番大切と思う」などを考えさせる吟味です。

  1. 一人一人は小さな力でも、力を合わせることで  凶暴で大きく強い相手にも打ち勝つことができる。
  2.  怯えたり絶望したり悲嘆にくれたりしながらも試行錯誤する中で(人は)リーダーとして成長していく。
  3. 一見否定的に見える異質性が、集団を救う。


 また、自分自身の経験と重ね合わせながら、それらの主題を読み直すという吟味もあります。そして、子ども相互でそれを出し合い、意見交換することも効果があります。

例)「スイミー」の主題について考える発問

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「スイミー」から三つの大事なことが見えてきました。
どれも大事だけど、三つの中でこれが一番大事というものを一つ選んでみよう。その理由も考えよう。

3.レオ=レオニの他の作品と読み比べる

 レオ=レオニは、「スイミー」以外にも「フレデリック」「アレクサンダとぜんまいねずみ」「コーネリアス」「あおくんときいろちゃん」など多くの作品を書いています。「スイミー」と人物像や主題が似ている作品もあります。それらを読む機会を作り「スイミー」の人物像や主題と比べさせることも吟味として有効です。

例)レオ=レオニの他の作品と読み比べる発問

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「スイミー」の作者レオ=レオニは、他にもたくさんの絵本作品をかいています。
今回は、「フレデリック」というねずみが主人公の物語を読んでみましょう。
「スイミー」と似ているところや違うところを探してみよう。

 拙著『物語・小説「読み」の授業のための教材研究 ―「言葉による見方・考え方」を鍛える教材の探究―』では、吟味よみの展開として、レオ=レオニの「フレデリック」と「スイミー」を読み比べ、その共通性を探っています。他にも「原文(英文)と谷川俊太郎訳を比較・検討」したり、「まぐろ」の吟味などを紹介したりしています。ぜひあわせてご覧ください。

掲載教材:「スイミー」「お手紙」「一つの花」「大造じさんとガン」「海の命」「少年の日の思い出」「字のない葉書」「故郷」

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「スイミー」の授業を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

📕注:本文は、小学校国語教科書『こくご二上』(光村図書,2015年)による。教科書の分かち書きを通常の書き方に改めて引用した。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して授業の助言・指導や講演を行なっている。