【後編】秋田県の学力はなぜ高いのか?−質の高い授業を生み出す2つのポイント

【後編】秋田県の学力はなぜ高いのか?−質の高い授業を生み出す2つのポイント

 全国学力・学習状況調査で小・中ともに学力トップクラスを誇る秋田県。その要因を前編・後編に分け、深く探っていく。今回の後編では、秋田県の学力保障により直接的に貢献している授業の質の高さを生んでいる2つのポイント「探究型授業」と「共同授業研究」について説明する。

北海道東北地域経済総合研究所『ほくとう総研情報NETT』93号(2016年夏)に掲載された文章を一部修正し、再掲します。

ポイント1.秋田のアクティブ・ラーニングモデル=「探究型授業」

   新学習指導要領では教育方法として「アクティブ・ラーニング」が提案されている。「課題の発見」「主体的」「協働的」「探究」「問題解決」「相互作用」「対話的な学び」「振り返り」などがキーワードとなるが、これらの要素をもった授業は、実は秋田県では既に広く行われている。それを秋田県では「探究型授業」と呼んでいる。

 その流れは下記の通りである。

秋田県の「探究型授業」の流れ

【1】「学習課題」の決定

 まず教師と子どもたちで本時の「学習課題」を決めていく。たとえば「『ごんぎつね』のクライマックスはどこか、本文を根拠に見つけ出そう」(国語)、「分数÷分数の計算では割る側の分数の分母と分子を逆にして掛けると答えが出るが、その理由を図や言葉を使って説明しよう」(算数)などといった課題である。

【2】解決を試みる「自力思考」

 それにもとづいて、まずは子どもは一人一人で解決を試みる。「自力思考」である。課題の決定過程で明らかになっていることが、自力思考のヒントになる。とは言え、思考の糸口が全く見出せない子どももいる。その場合、教師は個別に丁寧な援助をしていく。

【3】グループで話し合う「グループ思考」

 全ての子どもが自分なりの仮の「解決」をもったところで、グループの話し合い・学び合いに入る。「グループ思考」である。4人程度のグループが多いが、その中には司会(学習リーダー)が一人いて話し合いをリードする。グループの一人一人の考えを聞きながら、それを関連づけたり相違点を顕在化させたりしながら思考を深めていく。「なぜそこがクライマックスなのか」「本文のどこに根拠があるのか」「根拠は他にもないのか」「クライマックスとして二箇所の意見が出たが、その違いはどこにあるのか」「分数で割るということは、この図だとどうすることなのか」「分母と分子を逆にすることにはどういう意味があるのか」「どの図や説明がよりわかりやすいか」などを話し合っていく。「解決」は一つに絞られることもあれば、複数の「解決」がそのまま併存する場合もある。

 ここでも教師は各グループに助言に入る。話し合いが進んでいるグループには、さらに何を検討したらよいかを助言する。話し合いがやや混乱しているグループには、どこから検討していけばよいかを助言する。他のグループの検討の状況をあえて伝えることもある。

【4】追究・解明したことを「文章化し、発表する」

 授業の最後に教師は、板書を振り返りつつ追究し解明したことを確認する。子どもは、その授業の新たな発見は何かを再度確かめる。さらに子どもたちは、その中でも自分にとって一番の発見は何であったかなどを文章化し発表していく。

B問題の結果と無回答率の低さを生んだ理由

 全国調査の児童・生徒質問紙中に「授業で友達と話し合う活動をよく行うか」があるが、「当てはまる」と答えた秋田県の子どもの割合は、全国平均より小6で17.5ポイント、中3で25.6ポイント高い。学校質問紙の「児童・生徒の発言や活動の時間を確保して授業を進めているか」に「よく行った」と答えた秋田県の学校の割合は、全国平均より小学校で14.8ポイント、中学校で23.5ポイント高い。秋田県内の小中学校を訪問しても、上記のような探究授業を多く見る。研究授業では、常にそういう授業が公開され検討される。

 既に述べた秋田県の子どもがB問題でより良い結果を残しているのも、こういった探究型授業によるものと考えられる。また、同じく無回答率の低さとも相関があると考えられる。様々な多様な見方・考え方を交換し、論議しながら追究していく授業に参加しているために、子どもたちは「難しいけれど考えて見よう」「自信はないけれど取り組んでみよう」などと前向きに考える習慣が身に付いている。だから、無回答が少ないのである。

 そして学級全体の話し合い・学び合いである。グループごとに自分たちの話し合いの結果を学級に発表する。教師はそれを黒板に整理していくが、それ生かしながら学級全体の話し合いが始まる。学級全体の話し合いで「解決」が絞られることもあれば、新しい課題が生まれることもある。それを再度グループで検討する。一人一人に戻すこともある。

 「全体→グループ→一人一人」、またその逆の過程を繰り返しつつ学習課題の解決に迫っていく。「解決」は一つになることもあれば、複数の「解決」が位置付くこともある。

ポイント2.探究型授業を高めていくための「共同研究システム」

 「探究型授業」では、教師のより丁寧な準備が必要となる。教材研究、目標設定、単元計画、本時案、評価など周到な準備が求められる。また、授業そのものも、通常の授業より多くの時間がかかる。下手をすると時間だけかかりかえって学力低下になる危険さえある。しかし、秋田県の教師は、それをクリアし確かな結果を残している。それを支えるのが図2のような授業の「共同研究システム」である。核は校内研修会での共同研究である。

秋田県の「共同研究システム」の4つのステップ

【1】チームによる「事前研究」

「探究型授業」には様々な形があるが、下図のような形がより一般的である。まず教師と子どもたちで本時の「学習課題」を決めていく。たとえば「『ごんぎつね』のクライマックスはどこか、本文を根拠に見つけ出そう」(国語)、「分数÷分数の計算では割る側の分数の分母と分子を逆にして掛けると答えが出るが、その理由を図や言葉を使って説明しよう」(算数)などといった課題である。

【2】ワークショップ型の「研究授業」

 それにもとづいて、まずは子どもは一人一人で解決を試みる。「自力思考」である。課題の決定過程で明らかになっていることが、自力思考のヒントになる。とは言え、思考の糸口が全く見出せない子どももいる。その場合、教師は個別に丁寧な援助をしていく。

【3】「成果と課題」の報告

 全ての子どもが自分なりの仮の「解決」をもったところで、グループの話し合い・学び合いに入る。「グループ思考」である。4人程度のグループが多いが、その中には司会(学習リーダー)が一人いて話し合いをリードする。グループの一人一人の考えを聞きながら、それを関連づけたり相違点を顕在化させたりしながら思考を深めていく。「なぜそこがクライマックスなのか」「本文のどこに根拠があるのか」「根拠は他にもないのか」「クライマックスとして二箇所の意見が出たが、その違いはどこにあるのか」「分数で割るということは、この図だとどうすることなのか」「分母と分子を逆にすることにはどういう意味があるのか」「どの図や説明がよりわかりやすいか」などを話し合っていく。「解決」は一つに絞られることもあれば、複数の「解決」がそのまま併存する場合もある。

 ここでも教師は各グループに助言に入る。話し合いが進んでいるグループには、さらに何を検討したらよいかを助言する。話し合いがやや混乱しているグループには、どこから検討していけばよいかを助言する。他のグループの検討の状況をあえて伝えることもある。

【4】広がりつつある「事後研究」

 授業の最後に教師は、板書を振り返りつつ追究し解明したことを確認する。子どもは、その授業の新たな発見は何かを再度確かめる。さらに子どもたちは、その中でも自分にとって一番の発見は何であったかなどを文章化し発表していく。

小・中連携の共同研究も盛んに

 全国調査の学校質問紙の「学校全体の言語活動の状況や課題について全教職員で話し合い検討しいるか」に「よくしている」と答えた秋田県の学校の割合は、全国平均より小学校で20.4ポイント、中学校で22.9ポイント高い。「学校全体の学力傾向や課題を全教職員で共有しているか」に「よくしている」と答えた秋田県の学校の割合は、全国平均より小学校で13.8ポイント、中学校で18.3ポイント高い。各学校の教師集団のチームワークの良さがわかる。

 秋田県では小中連携研究が盛んになっている。事前の共同研究から小中の教師によるチームを作る。当日の研究授業参観、その後の検討会にも小中の教師全員が参加する。各グループには教科を越えた小中の教師がいる。それにより多様で多面的な検討が可能となる。

 このような質の高い授業についての共同研究が、秋田県では北から南まで比較的多くの地域・学校で展開されている。だから、秋田県の教師は探究型授業の力量が高いのである。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して行った授業の助言・指導、講演は1000回を超える。