【前編】秋田県の学力はなぜ高いのか?−全国学力調査トップクラスを生む6つの要因

【前編】秋田県の学力はなぜ高いのか?−全国学力調査トップクラスを生む6つの要因

 全国学力学習状況調査で小・中ともに学力トップクラスを誇る秋田県。その要因を前編・後編に分け、深く探っていく。前編では代表的な六つの要因を取り上げる。

※北海道東北地域経済総合研究所『ほくとう総研情報NETT』93号(2016年夏)に掲載された文章を一部修正し、再掲します。

小・中ともに学力トップクラスを誇る秋田県

 文部科学省が2007(平成19)年から全国学力・学習状況調査(以下「全国調査」)を始めた。公立学校の小6と中3のすべての子どもを対象に国語と算数・数学の学力を調査するものである。その調査で秋田県は、開始以来連続してトップクラスの成績を残してきた(2011年は東日本大震災のため未実施)。

従来型の「A問題」と判断力や思考力を問う「B問題」

 全国調査の特徴として、国語、算数、数学それぞれに「A問題」と「B問題」が設定されていることが挙げられる。

 「A問題」は、国語ではたとえば語句の意味や指示内容を問う問題、算数・数学では計算問題や従来型の応用問題などである。

 一方「B問題」は、国語ではたとえば二つの立場を示し「あなたはどちらの意見に賛成しますか」「なぜそう考えますか」など自らの判断を根拠とともに答える問題などが含まれる。算数・数学では同じ応用問題でも「その理由を図や言葉を使って答えなさい」といった根拠を言葉により答える問題などが含まれる。主体的判断力や論理的思考力、また説得的表現力や批判的思考力を問うものである。OECDが2000年から始めた「生徒の学習到達度調査(PISA)」などの国際調査の影響を強く受けた問題である。

秋田県の「B問題」の結果と無回答率の低さ

 秋田県の子どもは、小学校の国語・算数はA問題・B問題ともに、開始以来連続してほぼ全国1位の成績である。中学校の国語・数学はA問題・B問題ともに、開始以来1~3位の間の成績である。(2015年の秋田県の結果は、小学校の国語・算数はA・Bともに全国1位、中学校の国語はA・Bともに1位、数学はA・Bともに2位である。)

 さらに注目すべきは、秋田県の子どもの無回答率の低さ、そしてB問題の結果である。まず、秋田県は小6、中3ともに、A問題でもB問題でも各設問の白紙解答率(無回答率)が極めて低い。多くの設問で全国の二分の一~四分の一である。つまり、秋田県の子どもたちは、少々難問でも白紙のままにしないで、積極的に取り組むのである。そして、秋田県の子どもは、小6、中3ともに、よりB問題を得意としている。六年間(2009年~2015年)の結果を見ると、B問題の方がA問題以上に全国平均との差が大きくなる傾向にある。つまり、PISAなどに関わる主体的判断力、論理的思考力、表現力などに関わる問題でより良好な結果を残しているのである。

トップクラスを生む代表的な6つの要因

 秋田県・全国調査トップクラスの要因の中でも、特に次の六つが中心的なものである。

  1. 子どもの授業や学習に対する姿勢が前向きであること 
  2. 子どもの話し合い・意見交換を重視した「探究型授業」が多く行われていること
  3. 授業冒頭に「学習課題」「めあて」、終末で「振り返り」を行う授業が多いこと
  4.  「家庭学習ノート」の取り組みにより子どもが家庭学習を習慣化させていること
  5. 学校と家庭と地域の信頼関係・連携が強いこと
  6. 授業改善について質の高い「共同研究システム」が確立していること

「学習姿勢」と「家庭・地域の連携」

1.子どもの授業や学習に対する姿勢が前向きであること】の学習姿勢は、【5.学校と家庭と地域の信頼関係・連携が強いこと】の学校と家庭と地域の連携と深く関わる。多くの家庭や地域が、学校を大切にする姿勢、教師の指導を尊重する姿勢をもつ。そういう環境で育つ子どもたちは学校の活動に前向きに臨むようになる。授業・学習にも積極的に取り組む。

「家庭学習ノート」の取り組み

 学校と家庭と地域の連携のために各学校は、家庭や地域に丁寧な働きかけをしている。その一つが【4.「家庭学習ノート」の取り組みにより子どもが家庭学習を習慣化させていること】の「家庭学習ノート」の取り組みである。子ども全員にノートを持たせ、教師が学習計画を指導する。その計画に基づき子どもたちはそのノートを使い家庭学習を行う。子どもは翌朝、担任の教師にそのノートを提出する。それを担任の教師は帰りまでに赤ペンで評価を入れ子どもに返す。赤ペンを励みに子どもは家庭学習を改善していく。より細かな指導が必要な子どもは個別に呼び出し援助する。また、モデルとなるノートは、本人と保護者の許可を得て掲示したり通信に掲載したりして他の子どもの参考にする。

 このこと以外にも、子どもの生活習慣がより良いものになるように、学校と家庭が協力して指導を展開する。授業外での補習も丁寧に実施されている地域・学校が多い。

中でも注目すべきは「授業の質の高さ」

 そういう中で子どもの学力保障により直接的に貢献しているのが、授業の質の高さである。
 秋田県の授業は、子どもが考え話し合い課題を追究していく「探究型授業」が中核となっている。上記6要因のうち、【2.子どもの話し合い・意見交換を重視した「探究型授業」が多く行われていること」【3.授業冒頭に「学習課題」「めあて」、終末で「振り返り」を行う授業が多いこと】がそれに当たる。
 また、探究型授業は教師により高い指導力を要求する。それを支えるのが、秋田県の「共同研究システム」である。上記要因の【6.授業改善について質の高い「共同研究システム」が確立していること】がそれに当たる。

 【後編】では、秋田県のトップクラスの学力を生む、質の高い授業を実現する二つのポイント「探究型授業」と「共同研究システム」について詳述する。

執筆者

国語科教育研究者
国語の教師・国語科教育研究者として、40年にわたり国語授業の研究・実践を行う。全国各地の小・中・高校や教育委員会等を訪問して行った授業の助言・指導、講演は1000回を超える。