物語・小説を「読む力」を育てる指導方法-物語の新三読法[1]はじめに
「物語の新三読法」で高い国語力を育てる
「物語の新三読法:構造よみ―形象よみ―吟味よみ」は、物語・小説の深層のよみを効果的に展開していくための指導方法です。表層のよみだけでは見えてこない作品の様々な仕掛けや魅力を深掘りしていきます。
物語・小説の深層に迫ることで、子どもたちは確かな読み方を身につけていきます。それによって、質の高いことばの力が育つのです。
「物語の新三読法:構造よみ―形象よみ―吟味よみ」とは
物語の新三読法では、「構造よみ―形象よみ―吟味よみ」という三つの段階で作品を深堀りして読み込んでいきます。
まず、「構造よみ」で作品の全体構造を読み解き、「形象よみ」では作品のレトリックに注目しながら形象を読み解きます。そして「吟味よみ」で、作品を主体的に評価していきます。
※時間配分は、教材や指導の力点によって比率は変わりますので、あくまで目安となります。
1.構造よみ――構成・構造を読む
はじめに「構造よみ」で作品の構造を読んでいきます。そこで作品の大枠・組み立てや事件の方向性・関係性を俯瞰的に把握していきます。
時間配分:30%程度
2.形象よみ――形象・技法を読む
次にそれを生かしながら「形象よみ」で各部分の「鍵」となる語や文に着目し、形象や形象相互の関係を読み深めていきます。その際に様々な技法(レトリック)や仕掛けに着目、その延長線上で主題を掴んでいきます。
時間配分:50%程度
3.吟味よみ――吟味・評価をする
構造よみ・形象よみを生かしながら、物語・小説を再読し作品の吟味・評価を行うのが「吟味よみ」です。子どもが主体的に作品を評価します。
時間配分:20%程度
構造→形象→吟味というそれぞれの段階ごとに様々な読むための方法を習熟させ、子どもたちの「読む力」を育てていきます。国語が得意な子どもだけでなく、国語が比較的不得意な子どもも、わかりやすく物語・小説の面白さに近付けるようになります。
「表層のよみ」と「深層のよみ」
実際の授業では、物語の新三読法での指導に入る前に先生の範読(朗読)や子どもの音読、語句の確認などの指導が必要となります。この指導段階を「表層のよみ」(出会いよみ)と呼びます。
表層のよみに対し、「物語の新三読法:構造よみ―形象よみ―吟味よみ」の段階を「深層のよみ」(深めよみ)と呼びます。
表層のよみ 六つのポイント
「表層のよみ」でまず重視すべきことは、「この物語面白い」「わくわくする」「みんなで読んでみたい」など子どもと作品とのよりよい出会いを創り出すことです。そのためには次のような流れの指導が有効です。
表層のよみ 六つのポイント
- 作品との出会いの演出
題名や題材、作者への注目、内容の予告など、子どもたちが興味を引きそうなエピソードを提示します。 - 先生の朗読
読み聞かせなどの朗読と違い、先生の解釈が全面に出過ぎないように注意します。 - 語句や漢字の確認
重要な語句・漢字にしぼって確認します。数を多くし過ぎると子どもの興味をそいでしまうことがあります。重要語句・漢字以外は、「深層のよみ」の段階で押さえていきます。 - 子どもの音読
楽しみながらできるだけ多く音読を行います。「リレー読み」「役割読み」などさまざまな方法を使います。家庭でも音読をするよう促します。 - 場面やだいたいの話の筋立ての確認
だいたいの場面展開も押さえておきます。作品内で時間軸が行ったり来たりする錯時法が用いられている場合はここで時間の関係をざっくりと押さえておきます。 - 第一次感想
かんたんな感想発表のほか、短い感想文を書くことも効果的です。「深層のよみ」の最後に吟味文をかいて、第一次感想とを比べる指導も有効です。
表層のよみは、子どもの発達段階や作品の難易度によって、どのくらいの時間をかけるかは違ってきます。あまりここに時間をかけ過ぎると、構造よみ—形象よみ—吟味よみへの意欲が弱くなる可能性があるので配慮が必要です。
拙著『増補改訂版 国語力をつける物語・小説の「読み」の授業 ―「言葉による見方・考え方」を鍛えるあたらしい授業の提案 』では、様々な教材を引用しながら物語・小説の指導過程について丁寧に解説しています。
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掲載教材:「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」