国語の「授業びらき」がうまくいく3つのポイント
教師生活のなかでたどりついた3つのポイント
「どんな先生なんだろう。」「どんなことを学ぶのかな?」「勉強わかるかなあ?」。
新年度、子どもたちはひとりひとり、学ぶことへの不安や期待を持って授業を迎えます。
そういう中で行われる「授業びらき」は重要な意味をもちます。
わたしが国語の授業びらきで意識していたことは「国語の授業はなぜ必要なのか」「1年間の授業を通してなにを学んでいくのか」「何を大切にしながら学んでいくのか」というビジョンを子どもたちにとしっかり伝えるということです。
長年の教師生活のなかでたどりついた、授業びらきの3つのポイントをご紹介します。
ポイント1.なぜ国語を学ぶのかを問いかけ、一緒に考える
初めて国語を指導するクラスの授業びらきでは、かならず国語を学ぶ意味や意義について話をするようにしていました。
みんなは言葉を話したり聞いたり、文章を読んだり書いたりできます。ちょっと難しい言葉でも辞書を引けばなんとかなります。なのに、なんで「国語」などどいう教科をわざわざ勉強するんでしょう。
阿部昇『教師のための説得の技術』(民衆者,1989年)より
例えば次のように子どもたちに問いかけながら進めていました。
子どもたちの反応を受け入れつつ、まずは疑問をもったり考えたりするのは、とても大切であることをまず強調します。
では、なぜ国語を学ぶのか考えてみましょう。
子どもたちにさまざまな意見を言ってもらい、まずはそれらに共感し、受け止めます。その上で自分自身の考えを示すようにしていました。
国語を学ぶことは、生きることにかかわる
わたしは次のようなことを話していました。
今、先生は誰でも聞いたり話したり、書いたり読んだりできると言いましたが、実はそれはウソなんです。たしかに表面的には一応意味がわかったり、一応メモするくらいはまあ誰でもできます。しかし、本当に間違いなく深く「読む」、そして「書く」ということは意外とできていないんです。
阿部昇『教師のための説得の技術』(民衆者,1989年)より
子どもたちに「国語を学ぶことは、生きることにかかわるのだ」ということを伝えられたらと思っていました。
実は、日常生活だけじゃなくて、今の世の中は、たとえば政治でも言論でもテレビでもマスコミでも、そして科学や学問の世界でも、「ことば」というものを鍵にして成り立っているんです。その意味で現代の世の中は、「ことば」によって動いているとも言えそうなのです。
阿部昇『教師のための説得の技術』(民衆者,1989年)より
「なぜ学ぶのか」という問いについては、先生が十人いれば十通りの答えがあると思います。
明快になんの淀みもなく話せなくても、その時点での自分なりの考えが話せたらよいのではと考えます。
ポイント2.授業中のルールを決める
授業中のルールは、クラスや学年の状態によって何を優先するかが変わってきます。わたしの場合は次のような話をすることが多くありました。
わたしが示していた3つのルール
どれも大切な学習ですが、先生が一番大切にするのは、「グループや学級のみんなと話合いをしたり発言したりすること」です。
自分の言葉で発言したり、みんなで話し合ったりすることで国語の力がついてきます。
だから、先生が黒板の前に立って「こちらを向いて」とか「はい」と言ったら、何をしていてもすぐに今していることを中断して先生のほうに「目」と「耳」を向けて話を聞いてください。
でも、わかりにくいと思うときもあるはずです。友だちの意見がわかりにくいと感じるときもあります。そういうとき、わかったふりはしないでください。
「先生、わかりません」「○○の言葉の意味がよくわかりません」などと遠慮なく声を上げてください。
また、疑問に思ったことには「なぜ」「どうして」と問いかけてください。先生はそういう声を歓迎します。
ポイント3.投げ込み教材で国語の面白さを発見!
単元に入る前に国語授業への導入として、短時間で終えられる教材を投げ込みます。
授業びらきでの投げ込み教材の選び方
- 1〜2コマ程度で終えられるボリュームもの(詩、俳句、新聞などがおすすめ)
- 短い時間のうちに子どもたちが驚いたり喜んだりできるもの
- 「読み」の手法を学ばせられるもの
例えばわたしは、安西冬衛の詩「春」や松尾芭蕉の「古池や蛙飛こむ水のおと」、自作教材の「化けくらべ」などを投げ込んでいました。
小学校の下学年であれば、子どもたちがよく知っている童謡の歌詞を「詩」として読み直すのもおすすめです。例えば、アイスクリームのうた(作詞:さとう よしみ)などで詩の構造を読んだり、レトリックの工夫を読んだりすると盛り上がるかと思います。
番外編:自己紹介で◯◯しすぎはNG
授業びらきでは先生が自己紹介をすることもあります。
自己紹介で大切なのは、先生が遠慮や謙遜はしすぎないことです。わたしもそうでしたが、教師経験が少ないうちはつい、「わたしは教師としてまだまだ経験が少ない。」とか「まだまだわからないことだらけ」などと言いたくなってしまうものです。
高校生くらいになると先生が謙遜して言っていることが伝わりますが、小・中学生だと言葉をそのまま受け取ってしまう危険があります。「この先生は経験が浅くて頼りにならないのかな?」などと誤解してしまうこともあります。
一年目の新規採用だろうと二十年のベテランだろうと、子どもにとっては「先生」です。ぜひ自信をもって堂々と自己紹介してくださいね。
拙著『増補改訂版 国語力をつける物語・小説の「読み」の授業 ―「言葉による見方・考え方」を鍛えるあたらしい授業の提案 』では、授業びらきの投げ込み教材としても使える阿部の自作教材「化けくらべ」を全文掲載しています。
また、本では、様々な教材を引用しながら物語・小説の指導過程について丁寧に解説しています。
掲載教材:「モチモチの木」「ごんぎつね」「走れメロス」